オレの恋人のカカシ先生は、とてもワガママなひとだなぁと思う。
といっても、普段あれがしたいとか、これがしたいとかそういう自己中心的というわけではなくて、「恋人同士の禁止事項」というのが異常に多いのだ。だからそんなワガママが迷惑というのはなくて、逆に可愛いなぁと思う。
たとえば誕生日とかクリスマスとか、そういった特別な日にプレゼントはしなきゃいけない。だけど、「形のある物」はダメだそうで、ある日理由を訊くと
「形があるものはいずれ壊れてしまうでしょう?壊れてしまったらとっても悲しいから、だから思い出に残るようなものじゃないとダメなんです」
と返ってきた。
なるほどなぁと頷いて、オレはクリスマスに手紙を書いた。筆不精なオレはクリスマス1週間前から書き始め当日ギリギリに仕上がるという偉業を成し遂げた。きっと喜ぶだろうなぁと思って渡すと、カカシは心底がっかりしたような、けれども嬉しくて泣き出しそうな、ワケのわからない顔をした。
驚いて「どうしたんですか?」と訊くと、
「言葉がよかった」
と駄々っ子のように云った。
しょうがないなぁとオレはカカシ先生の手から手紙を取り上げると、心底恥ずかしかったがゆっくりゆっくり手紙を読んだ。そうしたらカカシ先生は本当に本当に喜んでくれて、何度も「もう一度、もう一度だけ」とオレが読むことをせがんだ。初めは断っていたオレも、結局は20回以上読んでしまったから、「やれやれあなたには敵いませんよ」と笑った。
そんなカカシ先生からは、聞いている方が恥ずかしくなるような言葉をたくさんもらった。
好きですよ、とか、愛していますよ、とか、後ろから抱きしめられて耳元で呟かれた。
「オレもですよ」
なんて返したら、息苦しいくらい強く抱きしめられて。ああ幸せだなぁと眼を瞑った。





そして月日は過ぎて、バレンタインが来た。本当はチョコレートを渡す気はあったのだが、「形が残るもの」と思ってあえて渡さなかった。それにその日はカカシ先生は任務に行っていたし、向こうもそれどころじゃないだろうなぁと思っていた。
すると深夜、暗い部屋に電話のベルが鳴り響いて、慌てて出てみれば、カカシ先生だった。
「なんでチョコレートがないんですか」
と、泣き声で受話器の向こうからカカシ先生が云った。
「ああ、しまった」と心が嘆いて、「どうしようか」と思考を巡らせる。
「チョコ、食べましょうよ」
オレは慌てて云うと、上着をひっつかみ近くのコンビニへ駆け込んで、板チョコを買ってカカシ先生の家へ走った。家へ入るとカカシ先生がまだ受話器を握り締めたまま電話の前で立っていた。
「ごめんなさい」
肩で息をしながら、必死に声を絞り出した。
「ごめんなさい」

オレ達は居間へ移動すると、コンビニで買った板チョコの包みをはがして、半分に割った。
「こんなので、申し訳ないんですけど・・・・」
だけどカカシ先生は黙ってそれを受け取り、そっとオレの肩に頭をもたれ掛けた。
「ねぇ、ごめんなさい。わがままで、オレってさ」
静かな部屋にカカシの声と鼻をすする音が響く。
「バカですね、何を云ってるんですか」
そういってオレはカカシ先生を抱きしめた。
すると肩に、涙の温かい温度がじんわりと広がった。まったく可愛いなぁ、オレが居ないとなぁと、もっと強く抱きしめた。
「そうですよねぇ、チョコレートは食べたら形は残りませんよね」
ふふっと笑ってそう云うとカカシ先生が頷いたから、今度は小さく声を上げて笑った。






オレの恋人のカカシ先生は、ワガママなひとだなぁと思う。だけどそんなワガママな、恋に真剣な所が大好きで大好きで。
「イルカ先生が観たいって云ってた映画あるでしょ?あれチケット買ったから一緒に行きましょうねー」
オレが口を開きかけたとき。
「ありがとうなんて云っちゃいけませんよ」
とオレの口をふさぐ。
「大好きな人を喜ばしたり、幸せにするっていうのは、恋人の義務なんですから」カカシ先生は真剣な眼差しをオレに向けた。「だから、オレはお礼を云われる筋合いは無いんですよ」


ワガママなカカシ先生が大好きで、オレは毎日そんな禁止事項に従っている。







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こういう類のストーリーは
書いて読み直すときが一番恥ずかしいです!






04/01/11